横田ファーム@千葉県(2)(Yokota farm at Chiba prefecture)

横田ファーム@千葉県の訪問内容報告、第2回です。技術寄りの内容を話します。 

 

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イチゴ農園苗の下側の写真です。イチゴは水耕栽培も可能ですが、横田ファームでは培地は土壌養液栽培袋栽培で行われています。

 

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イチゴ苗の小苗です。ランナーとも呼ばれます。イチゴは種からではなく、苗から発生するこの小苗を別のポッドに移していくことで苗を増やしていきます。この小苗が、ポッドの土に根を生やしたら、親苗と切り離します。

 

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 土壌の中に埋め込まれている温水管です。一般的な温室栽培では、ハウス内の気温を上昇させることで、施設内の温度を制御しますが、横田ファームでは、土壌中の温水管の温度によって温度をコントロールします。このほうが、植物にとっての暖房効果が高くより効率的に暖められるそうです。 

 

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温水管の 温水は、ハウス外の給湯器で作られます。その際に発生する排ガスは上の写真にあるパイプからビニルハウスの中に排出される構造になっており、排ガス中のCO2が植物の生育に利用されるようになっています。

 

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圃場を撮影するカメラです。

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カメラで撮影した画像データ、ハウス内の温度、養液の濃度・量・タイミング、温水管の温度など、もろもろのデータを送信する機械です。現在、1時間に1回程度の間隔でデータを送信しているそうです。

 

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養液を注入するタイミングと量を設定するための制御盤です。設定は手動で行われます。

 

■その他の環境制御技術
1 補光ランプもあったが、自動制御されているかどうかは不明。
2 天窓の開閉は、自動化されている施設とされていない施設がある。

 

■作物栽培自動化技術の現状と今後の展開
横田ファームにおいて自動化されているのは、以下の作業でした。
・養液の注入
・土壌の温度管理
・CO2の注入
・窓の開閉(一部)
・写真や各種栽培データの取得

上記の自動化作業に関連して、手作業で行う作業としては以下があると思われます。
・養液濃度や養液を注入するタイミングの調整
・生育ステージや外気の状況に応じた設定温度の調整
・窓開閉の程度や時間の調整

オランダで行われているような施設園芸や資本潤沢な企業が参入する場合においては、より多くの機械やシステムを導入し、もっと多くの部分を自動化させているそうですが、横田ファームでは初期コストを考慮して導入していません。

横田さんは、よく「自動化のための設備を導入し、理論的に導き出された設定どおりに栽培しても想定通りに作物が育たない、という相談をよく受ける」そうです。

相談者のもつ環境制御システムが、温度・光強度・養液などの環境要因を総合的に管理する総合環境制御的なものか、単に各要因を設定された数値通り個別に制御するものなのかはさて置き、想定通りに作物が育たない理由としては、以下の3つが考えられます。
1 種子や苗ごとの生育のばらつきを考慮した調整をしていない。
2 環境制御装置が正しく作動していない
3 実際の栽培環境や目標とする作物の品質がケースバイケースのため、理論的に導き出された理想的な環境設定が実際にも理想的であるとは限らない。

これらの問題は、現時点での環境制御技術の限界を示していると思います。
つまり、これらの問題を解決するほど、環境制御装置の多くは高性能ではない(または解決できるが莫大なコストがかかる)、ということです。

なので、これらの問題を解決するには、栽培技術を持っている方々が日々作物を観察し管理する必要があります。前述した「想定通り育たない理由」対応させると、
1 一部の作物の生育が悪ければ、その部分の養液濃度を変えたり、
2 システムでは異常値を示していてもリアスの作物に何の問題もなければ、センサーが正しく作動しているか確認したり、
3 生育ステージや品種や期待する品質によって、理論的に理想的な環境をカスタマイズしたり、
といったことを手動で行う必要があります。

果たして、これらの作業を自動化することはできるのか?例えば、
1 作物苗それぞれの写真や土中の養分濃度から成長度や不足している栄養素を個別に測定し、それに基づいて温度や養分組成を総合的に調整したり、
2 異常値を示す原因を特定するところまで自動的に分析したり、
3 ハウスの外部環境や目標とする作物の酸度や糖度に基づき、作物の成長に伴って環境を修正したり、
といったことができるのでしょうか?
私はこれから現場の栽培や環境制御技術を学ぶ身なので正確なところは分かりませんが、少なくとも向こう2、3年でできることではないと思います。特に1や3は、そもそも手動でその技術を習得するのも5年10年という時間を必要とする職人的技術だと思います。

しかし一方で、これらの技術を確立するためにいま多くの企業や研究機関が多くのリソースをつぎ込んでいます。実際、横田ファームにもRICHOからこのような技術を発展させるための協力要請があったそうです。
そのため将来的には徐々に、このような環境や苗・種子の個体差や生育ステージをも考慮した自動制御ができるようになっていくでしょう。そして、毎日圃場を管理する作物栽培スペシャリストには、これまで蓄積された経験と暗黙知だけでなく、そのような制御技術を使いこなし、作物を定量的に分析し適切なアクションを取れるスキルが必要とされるのではないかと思います。

 

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