NPO植物工場研究会が考える、太陽光利用型植物工場の今後の展開

NPO植物工場研究会 太陽光型植物工場の研修に参加してきました。非常に内容の濃い3日間でした。

今回講師をされたのは、千葉大学院園芸学研究科の先生方でした。

以下、先生方が考える今後の太陽光利用型植物の展開についてまとめてみました。参考になれば幸いです。

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日本の太陽光利用型植物工場の今後の展開として、まず状態変数制御から速度変数制御への転向が挙げられる。これまでの太陽光型植物工場における環境制御では、温度、飽差、光強度など様々な環境要因を制御対象としてきた。これらのほとんどは、時間という概念がなく、ある一点での状態を表したパラメータ(状態変数)である。しかし本来の制御目標は、より植物の成長に対して本質的な、養分吸収速度、蒸散速度、光合成速度、呼吸速度など、単位に時間の次元を有するもの(速度変数)である。現状では、このような速度変数を連続的に計測・評価する簡単な方法が確立されていないが、原理的には既存の計測技術で測定された情報を時系列的に計算したり、複数種のセンサーからの情報を組み合させて推定されるだけで可能となる。例えば、養分吸収速度は、養液の流量と、培養液の各種養分濃度を一定間隔で測定した時の濃度差や (循環式の場合)培養液の川上と川下のイオン濃度差から計算することは可能である。千葉大学でも研究が行われており、より制御が容易な人工光型植物工場での開発も検討している。

 次に、作物の苗単体ではなく群落を計測・制御の対象としたシステムが考えられる。例えば、CO2計測方法。光合成速度を計る際は、葉のCO2吸収量を測定し、そこから計算されるが(図1-2)、従来のCO2吸収量測定方法は、植物の葉をクリップで挟み、CO2吸収量を測定する方法であった。しかしこの方法では、ひとつの作物体の一つの葉でしか測っておらず、その数値が作物群落のCO2吸収量を代表する値とは大きく異なる場合が多い。実際、これまでの実験でも作物苗1本で有意な結果が出たとしても、群落で同じ実験をした場合全く結果が出ないことはよく起こった。そこで、群落全体のCO2吸収量を測定するために、サーモグラフィや画像処理などの技術の応用が期待される。

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統合環境制御においては、設定値修正の自動化が行われるようになると考えている。現在利用されている環境制御システムの多くは、任意に環境情報を設定し、それに併せてシステムが自動的に制御機器(窓、カーテン、ファン、温湯管など)を動かす、というものである。そのため、外環境や生育ステージが変わるたびに、生産者が設定値を修正していかなければならない。しかしこれからは、ある期間の環境情報を基に、設定値の修正を自動で行えるようなシステムが出てくると思う。例えば、「昼間の日射量に基づいて夜間の温度設定値を変更する」という機能が考えられる。これは「日射量が多い→光合成が活発→同化物が多く発生→夜間に同化物を転流する必要あり→夜間の温度上げる」という考えに基づき、あらかじめ設定された夜間温度をシステムが自動で変更する。

 栽培技術から少し外れるが、養液栽培用、太陽光利用型・人工光型植物工場用の品種が今後開発されていくと思う。現在、需要が比較的小さく価格が高いこと、またそもそもあまり開発されていないことから、日本の植物工場で利用されている野菜の品種は、露地栽培で利用されている物をそのまま利用している。しかし、それでは十分な収量をかげることができない。

 これまでの日本の品種改良の方向性は、食味の向上、環境ストレス耐性(耐熱性、耐病性など)が主であった。しかし、人工的に最適なバランスで栄養が与えられ環境ストレスが除かれる環境では、栄養成長に偏る傾向がある。そこで、ストレスがない状況においても栄養成長に偏らず、その恵まれた環境を生かすことができるような品種が求められる。

 オランダでは、環境制御、施設改善、育種をそれぞれ並行的に発展させてきた。その結果として、現在の高い収量が実現された。単純にオランダの施設を導入したらすぐオランダ並みの収量が得られるわけではない。

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